初導入ユーザーと長年のユーザーが語るERP導入の理想と現実、そして成功の秘訣

  • ERP導入企業は、システムやデータを十分に活用し、経営改革やDX推進に役立てることができているでしょうか。7月13日にオンライン配信のSAPPHIRE NOW Japanで行われたパネルディスカッション「ERP導入の理想と現実」は、SAPジャパンでミッドマーケット事業を統括する藤井善豪が、ERP導入の体制づくりからデータの可視化と活用まで、リアルな体験と学びについてうかがいました。ゲストスピーカーにお迎えしたのは、SOLIZE株式会社 執行役員 経営戦略・IT 戦略担当の堤皓朗氏と、東京化成工業株式会社 管理ユニット 執行役員 Global IT Headの幸村祥生氏です。SAPジャパン 藤井善豪、SOLIZE株式会社 堤皓朗氏、東京化成工業株式会社 幸村祥生氏

SAPジャパン ミッドマーケット事業本部 統括本部長 藤井善豪(左)
SOLIZE株式会社 執行役員 経営戦略・IT 戦略担当 堤皓朗氏(中央)
東京化成工業株式会社 管理ユニット 執行役員 Global IT Head 幸村祥生氏(右)

ERP導入と業務変革、それぞれの企業の進め方

はじめに、ゲストスピーカー2社のERP導入プロジェクトの概要が紹介されました。
製造業向けエンジニアリングサービスを展開し、インド、中国、米国などグローバルにも進出しているSOLIZEは、2020年から体制/組織や人事制度、IT基盤などさまざまな変革を行っています。その中の1つの活動である、基幹・会計システム刷新を含む「SDX(SOLIZE DX)プロジェクト」では、今後の事業成長を見据えデジタルテクノロジーを活用したオペレーションへの変革と経営基盤強化を進めています。基幹システムのSAP S/4HANA Cloudおよび経費精算のConcur Expenseの導入においてはFit to Standardとノンカスタマイズを基本方針に3つのスコープを設定し、2020年9月末から活動を開始、国内については一部既に稼働を開始、2022年1月に全体稼働を予定、また海外事業へと展開を計画しています。

SOLIZEのSAP Concur導入プロジェクト概要

化学品向け試薬の製造・販売をグローバルに行う東京化成工業は、「DX推進プロジェクト」として市場ニーズへの対応力強化に向けた業務プロセスの改革とシステム刷新を行い、デジタル活用による俊敏なビジネスモデル変革、データドリブン経営を進めています。2004年からSAPシステムを運用してきた同社が15年間で得た成果と振り返りとしては、海外への事業展開が経済的かつ容易に行えた半面、接続数が増えてシステム構成が複雑化したことを挙げています。また、各国が定める化学製品のコンプライアンスへの俊敏な対応、組織力の強化/活性化の一方で、SaaS活用によりデータが分散してしまうという想定外の状況も発生したといいます。

2020年5月からのシステム刷新プロジェクトでは、SAP HANA Enterprise Cloudを基盤に、SAP S/4HANAだけでなくEコマースのSAP Commerce Cloud、SAP Analytics Cloud、SAP SuccessFactorsなど、ビッグバン導入を実施しています。

東京化成工業のSAPを活用したプロジェクトの全体像

ERP導入におけるギャップ解消策

初めてERPを導入したSOLIZEでは、事業ごとに複数の法人に分かれていた国内の体制を1つの法人に統合するにあたり、非統一の管理プロセス、属人的、アナログな作業が多いという課題を解消する必要がありました。そこで将来に向けてIT基盤を整備し、業務基盤も統合するためプロセス統合/標準化を決意したと堤氏は説明します。
「ITが先導するのではなく、全体の旗振りは経営戦略(部門)が行い、プロジェクトメンバーを課題意識の高い事業部門側から選定することでFit to Standardのメリットを理解してもらい、事業部間の連携も取って進めたことが功を奏したと考えています」

一方、SAP R/3からの15年の経験を踏まえ、SAP S/4HANA導入を行った東京化成工業の幸村氏は、「以前の経験を活かすため、導入だけでなく運用、AMOサービスまで含めたパートナー選びを行い、いかにシステムを陳腐化させずにシステムを維持していくかを意識しました」と語ります。パートナー選定については、化学業界向けベストプラクティスの利用経験を重視しながら、ビジネスチームのリーダーに外国人を据え、グローバルプロジェクトを英語で進めることを条件にしたといいます。その上で、今回は複数システムを入れ替えるビッグバンプロジェクトであったため、システムごとにパートナーを分けた結果、運用ノウハウを複数のAMOや運用パートナーにシフトする際の作業が増えたことが反省点と明かしました。

SAPジャパンの藤井は、ERP導入の「理想と現実」が乖離しないためのキーワードとして「現場の巻き込み」を挙げ、両氏にプロジェクトに現場を巻き込むための工夫についてうかがいました。まず堤氏は、「目的」を共有することの重要性を強調しました。「目的は決してERP導入ではなく、国内の法人を統合しながら無駄を省き、その先のDXにつなげていくための基盤作りであることを何度も説明しました」その結果、SOLIZEではマネジメント層の意識が統一され、現場からの信頼も厚いプロジェクトメンバーが選定されました。また、プロジェクト開始後も目的がぶれないように、プロジェクトマネージャーが週次のミーティングで目的や大方針について毎回触れるようにして、浸透を図ってきたといいます。

幸村氏は、システムの入れ替えありきではなく、世の中の流れや変化に柔軟に対応できる体制づくりが重要と語りました。「世の中が変わっていく中で当社の製品をどのようにお客様に届けていくか、BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)を意識しながらプロジェクトを進めていったので、ビジネスチームのほうから積極的に関わってくれて、2年間のプロジェクトを常にリードしてくれました。IT側からは、ぶれがないようにサポートすることで、バランスよくプロジェクトを進めていくことができたと思います」

経営改革につなげるためのデータ活用ビジョン

今後の展開について堤氏は、各部門が毎月数字を集計している経営情報やKPIなどをシステム化することによって経営情報の一元化を進め、経営判断のための情報を素早く集約して可視化したいと考えており、ここからがスタートラインになると話します。いっぽう幸村氏は、KPIを絞り込んで会社の進むべき方針がぶれないように「見える化」を進めた延長線上に「動く化」を置きたいと語ります。現在の取り組みが正しい方向なのか試行錯誤して、KPIの決め方も軌道修正しながら、「動く化」につなげていきたいという方針です。

最後に、SAPへの期待について両氏はそれぞれ、次のように述べました。
「SAP S/4HANA Cloudがほかの基幹システムと比べて優れていたのは、四半期ごとにアップデートしてさまざまな変化にも即時対応できるという点です。クラウドネイティブ、ノンカスタマイズ前提のため、システム側が変化に対応してくれることは極めて重要です。2021年8月に初めてのバージョンアップを迎えますが、変更点を確認する作業の負荷低減がポイントとなるため、そこに期待しています。また、Concur Expenseとのデータ連携には思いのほか工夫が必要だったため、SAPグループ製品とのよりスムーズな連携の仕組みを待ち望んでいます」(堤氏)

「今回は、SAP S/4HANAとSAP HANA Enterprise Cloudのハイブリッドで導入を進めてきました。定期的にバージョンアップする必要があることは理解していますが、かなり大掛かりなプロジェクトを組む必要があります。新しいバージョンでは、業務やビジネスにどのようなメリットがあるかというロードマップをしっかりと示していただきたいですね」(幸村氏)

両社のお話から鮮明になったのは、ERP導入プロジェクトにおいては、既存の業務フローの改善によって業務改革が起こることはなく、人や組織をしっかりと巻き込む必要があることです。SAPジャパンの藤井は「業務改革を点で捉えるのではなく、継続的なジャーニーとして育んでいく意識でプロジェクトを進めていくこと」の重要性を強調し、パネルディスカッションの幕を閉じました。

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