MM(購買管理)モジュールのマスタについて解説します。
マスタの設定をもとに、購買発注のトランザクションデータに値がセットされます。
そのため、マスタ設定をうまくやっておけば、購買発注伝票登録が楽になります。
どのようなマスタなのか、どんな設定ができるのかを理解できるように解説していきます。
Contents
MMマスタ一覧
MMマスタは主に以下の6つがあります。
マスタ名 | T-code | 概要 |
BPマスタ(仕入先マスタ) | BP | 仕入先の情報をセットするマスタ |
品目マスタ | MM01 | 購買する品目(原材料・商品など)の情報をセットするマスタ |
購買情報マスタ | ME11 | 仕入先 x 品目の情報をセットするマスタ。同じ原材料でも仕入先によってセットする値を変えることが可能 |
条件レコード(購買価格) | MEK1・MEK2 | 価格情報をセットするマスタ |
供給元一覧 | ME01 | プラント x 品目ごとに使用できる仕入先を定義するマスタ |
供給量割当 | MEQ1 | プラント x 品目ごとに使用できる仕入先が複数あるとき、どのくらいの割合でその品目を調達するか設定するマスタ |
各マスタの紐づきはこのようになっています。
それでは各マスタについて解説していきます。各マスタの紐づきを意識しながら読むと理解が進むと思います。
BPマスタ(仕入先マスタ)(BP)
ERP 6.0までは仕入先マスタとして管理されていましたが、
S/4 HANAから、仕入先も得意先も「BPマスタ」として管理されるようになりました。
BPマスタでは、「BPロール」により、仕入先なのか得意先なのかのロール設定をします。
1つのマスタに複数のロール付与が可能です。
例えば、あなたの会社にとって、株式会社ABCが 仕入先でもあり・得意先でもある場合、BPマスタ:100001 に「仕入先ロール」と「得意先ロール」を付与し、管理します。
このことで、S/4 からは仕入先・得意先が同じコードで管理できるようになり煩雑さがなくなりました。
MMで使用するには、「ビジネスパートナー」「仕入先」「FI得意先」の3ロールを割り当てることは最低限必要です。
ビジネスパートナーロール
ビジネスパートナーロールには、会社名・住所など、他ロールでも共通して使用する項目を設定します。
仕入先
仕入先 x 購買組織単位で設定します。
通貨・支払条件・取引先機能・インコタームズ・入庫基準請求書照合・ERS入庫・自動購買発注など、購買発注のトランザクションの元となる項目を設定します。
FI仕入先
仕入先 x 会社コード単位で設定します。
統制勘定・本店勘定(本店・支店の関係)・支払条件・クレジットメモ条件などの設定をします。
品目マスタ(MM01)
品目マスタは、販売する品目(原材料や商品)の設定をします。
※原材料とは仕入れたモノを自社の生産に使用する品目、商品とは仕入れたモノをそのまま販売する品目
購買品目の場合、赤字の「購買ビュー」の拡張(設定)が必要です。
※原材料の場合はMRP・作業計画、商品の場合は販売ビュー の拡張(設定)も必要。
品目分類 | ビュー |
原材料 | 基本データ1基本データ2販売:販売組織1販売:販売組織2販売:一般/プラント購買管理MRP1MRP2MRP3MRP4作業計画プラント/保管場所1プラント/保管場所2会計1会計2原価1原価2 |
購買管理
購買管理ビューでは、品目xプラント単位で設定可能です。
主に「購買グループ」「発注単位」「自動購買発注」「購買許容値キー」「検査中在庫への登録」などを設定します。
- 購買グループ:品目を発注する購買グループ(部署や担当者)を設定
- 発注単位:基本数量単位(原価計算の単位)と異なる場合、発注時の単位を設定します。(例:原価計算はKGだが、発注はPCでしている場合、”PC”と設定)
- ロット管理区分:在庫管理をロット単位で実施したい場合、フラグを設定
- 自動購買発注:購買依頼を自動的に購買発注に変換できるかフラグを設定
- 購買許容値キー:購買する品目についての出荷指示や発注請書の要求、催促状の発行日数、有効許容限度などを設定するキー
購買情報マスタ(ME11)
購買情報は、仕入先 x 品目 x 購買組織 x プラント単位 でマスタ設定をします。
使い方は、原材料Aを 仕入先X、仕入先Y それぞれに購買する場合、購買情報マスタにて、
- 仕入先X x 原材料A の設定
- 仕入先Y x 原材料A の設定
が可能です。
<一般データ>
一般データでは、催促日数・仕入先品目コード・発注単位などを設定します。
購買情報マスタの設定値は、仕入先マスタ・品目マスタよりも優先されます。
例えば、品目マスタで「第1回催促状日数:1」と設定、
購買情報マスタで「第1回催促状日数:2」と設定していた場合、
購買情報マスタの「第1回催促状日数:2」が優先されます。
<購買組織データ1>
購買組織データ1では主に、「納入予定日数」「不足納入許容範囲」「過剰納入許容範囲」「過剰納入無制限」「税コード」「入庫基準請求書照合」「ERSなし」「正味価格」を設定します。
- 納入予定日数:発注から入庫までにかかる予定日数を設定
- 不足納入許容範囲:発注数量に対して、どれだけ入庫数量が下回ってもよいかパーセンテージを設定
- 過剰納入許容範囲:発注数量に対して、どれだけ入庫数量が上回ってもよいかパーセンテージを設定
- 過剰納入無制限:発注数量に対して、入庫数量が無制限に上回ってもよいかフラグを設定
- 税コード:消費税などの税コードを設定
- 入庫基準請求書照合:請求書照合を入庫時に自動で実施する場合にフラグを設定(ERS実施する場合)
- ERSなし:ERSをしない場合にフラグを設定
- 正味価格:単位当たりの価格を設定
<購買条件>
購買条件ではキー単位(仕入先 x 品目 x 購買組織 x プラント)で、購買価格を設定します。
マスタ設定方法については、こちらの記事で解説しています。
条件レコード(購買価格)(MEK1・MEK2)
条件レコードとは、購買価格を設定するマスタのことです。
条件レコードは、条件タイプ(基準額・運賃・値引きなど)ごとにSAP標準で用意されているキー項目の組合せごとに価格を設定でします。
「追加料金/値引き」に関して、スケールを使用し、パーセント or 数量依存 or 金額依存にて、金額増減が可能です。
例えば数量依存の場合、
- 100 PC以上お買い上げの場合、-5%
- 1,000 PC以上お買い上げの場合、-10%
といった価格のスケール設定が可能です。
通常、価格はある日を境に、変更されます。
例えば、今年の12/1 までは、100えん。 来年1/1 からは、120円。 といった設定をします。
そのため、条件レコードには「有効期限」を保持しています。
初期設定時は、このようになっていますが、
価格 | 有効開始日 | 有効終了日 | 登録日 | |
100円 | 2020/9/1 | 9999/12/31 | 2020/9/1 |
仮に、2020/12/15に来年1/1からの価格を設定した場合、以下のようになります。
価格 | 有効開始日 | 有効終了日 | 登録日 | |
100円 | 2020/9/1 | 2020/12/31 | 2020/9/1 | |
120円 | 2021/1/1 | 9999/12/31 | 2020/12/15 |
この場合、2020/12/31までは、100円ですが、
2021/1/1からは、120円の価格設定になります。
供給元一覧(ME01)
供給元一覧とは、プラント x 品目ごとに使用できる仕入先を定義するマスタのことです。
供給元一覧ではプラント x 品目単位で使用できる仕入先・有効期限・購買組織を設定します。
また、固定仕入先とするか、ブロックする仕入先とするか、MRP対象とするかの設定も合わせてします。
供給元一覧の設定方法は、以下4種類あります。
設定方法 | T-code | メモ |
マニュアル設定 | ME01 | |
購買基本契約登録・変更時に設定 | ME31K・ME32K | 購買基本契約画面の「補足」→「供給元一覧」から設定 |
購買情報マスタ登録・変更時に設定 | ME11・ME12 | 購買情報マスタ画面の「補足」→「供給元一覧」から設定 |
自動設定 | ME05 | 購買基本契約・購買情報マスタを読み取り、自動で設定 |
供給量割当(MEQ1)
供給量割当とは、プラント x 品目ごとに使用できる仕入先が複数あるとき、どのくらいの割合でその品目を調達するか設定するマスタのことです。
供給量割当を使用するには、品目マスタ-購買管理ビューで、「供給量割当使用」の項目にチェックがついていることが前提です。
供給量割当では、複数仕入先に対して、どのような発注数量比率とするか設定します。
また、発注の際に最大発注数量やロットサイズをセットすることも可能です。
サマリ
ここまでMM(購買管理)モジュールのマスタ6つについて解説してきました。
購買発注伝票は、この6つのマスタを元に登録されます。
6つのマスタをうまく設定しておくことで、購買発注伝票登録時のオペレーションが楽になります。
MMを触るうえで、まずはマスタでどのような設定・制御ができるのか、ということを業務ユーザに説明も必要性が出てくるので、この記事が参考になればと思います。