
簿記が分かっていても、その仕組みがよく分からないのが転記キー。
転記キーによって、使える勘定コードがあったりなかったり。取引内容によっても入力する転記キーが指定されていたりして、正直ややこしいです。
ですが、このページを最後まで読めば、1から10まで確実に理解できます。
というのも、仕組み自体は実は難しくないんです。
ただ、それを説明してくれる人がいなかっただけです。このページで全部理解してしまいましょう。
SAPの利用者は、ページ前半だけでもパッと呼んでみてください。今後の業務がスムーズになりつつ、ちょっとだけSAPシステムの「くせ」が分かります。
また、システム開発者の方は後半のカスタマイズ方法を読んでいただければ、転記キーについて完全マスターが可能です。
ABAPやFIモジュールを中心にノウハウをためていますので、是非この機会に当ブログを覚えて頂けると嬉しいです。
それでは説明を始めます。
転記キーの役割
冒頭、結論ですが「転記キーは会計伝票の各項目を制御しているだけ」です。
各項目の制御とは、ずばり各項目への入力項目を「必須/任意」とするか。
そもそもその項目自体を「表示/非表示」にするか。
項目へは何を入力させるか?
これだけです。
なぜ転記キーが必要か
SAPに転記キーが無い世界を考えてみましょう。
もし転記キーが存在しなかったら、伝票入力時になんの制御もかからず「非常に楽」です。
その一方で、SAPは世界各国・世界各業務に対応しているため、なんの設定もしていないと入力項目が膨大に存在することになります。
また、仕訳を間違えて投入してしまったとしても、その間違いに気づきません。
そして、各業務に必要な情報を入力していなくても、その間違いに気づきません。
また、本来SAPの売りが「全業務のデータを一元管理できること」にあるのですが、転記キーで業務を識別し必要な情報を必要な分だけ収集することができなくなってしまいます。
※もちろん、転記キーが無くても他の方法でコントロールすることは可能です。が、転記キーを全く利用しない現場は稀な気がします。
押さえておきたい転記キー
40 借方入力
最も基本な転記キーです。
後述するカスタマイズ方法にもよりますが、ほぼ何も制御がかかっていない転記キーです。
総勘定元帳の借方(仕訳の右側)入力をする際に利用します。
50 貸方入力
転記キー40と同様、最も基本の転記キーです。
総勘定元帳の貸方(仕訳の左側)入力をする際に利用します。
31 請求書
貸方入力を行う転記キーです。
ただし、これは仕入先への支払に関する業務で利用します。
主に買掛金などの統制勘定(補助元帳へ転記する仕訳)を入力する際に利用します。
21 クレジットメモ
借方入力を行う転記キーです。
転記キー31と同様、統制勘定を利用して仕訳を打つ際に利用します。
業務パターンとしては、得意先への売掛金処理を想定しています。
転記キーはカスタマイズによって使い方が異なる
代表的な使い方を解説しましたが、あくまでも一例です。
同じ転記キー40を利用して総勘定元帳への借方入力を行うとしても、それぞれの会社によって入力が必要な項目が違う可能性もあります。
SAPは、幅広い業務パターンを想定して作られており、基本のカスタマイズをすることで利用可能な状態を作り上げます。
したがって、その会社ごとにカスタマイズ方法も異なるため、使い方も異なるというわけです。
逆に言えば、その会社の業務内容に合わせて使いたい形でSAPを使うこともできるんです。そこがSAPのすごいところであり、一番売れているERPシステムであるゆえんです。
細かい転記キーごとの使い分けは、各現場の操作マニュアルや、開発者であればカスタマイズ定義書などを参照することで確認できます。
使い方に迷ったら、各現場ごとの設計書を見るしかありません。
さて、ここからページの後半です。
実際に転記キーを利用して伝票入力項目の制御の設定を解説していきます。
カスタマイズ内容
転記キー
転記キーを識別するコードを設定します。
標準で40,50など既に設定されているもの以外に設定を行う場合、コード値が被らないように設定する必要があります。
2文字の英数字で設定します。
名称
転記キーの名称を入力します。
ここに設定した名称が実際のSAP利用者の目に触れるため、分かりやすい名称を付ける必要があります。
借方/貸方
その転記キーを利用した際に「貸方入力なのか借方入力なのか」を決定します。
1つの転記キーで借方・貸方どちらも入力できるものはありません。
勘定タイプ
勘定タイプを設定します。
主要な勘定タイプは以下の5つです。
・ A 資産 Assets
・ D 得意先 Customers
・ K 仕入先 Vendors
・ M 品目 Materials
・ S 総勘定元帳勘定 G/L accounts
伝票入力を行う際に統制勘定の利用有無 / 統制勘定の種類によって使い分けます。
非表示・入力必須・任意入力
各項目に対して、非表示・入力必須・任意入力を設定します。
利用想定の業務内容に応じて、設定を行います。
カスタマイズ時の注意点
特殊な要件が無ければ標準利用
カスタマイズはたったこれだけです。
ただし、特殊な要件が無ければ標準のまま利用でOKです。
標準の転記キーを眺めているだけでわかりますが、めちゃめちゃ膨大な数の転記キーが既に用意されています。
したがって、どの転記キーも要求を満たさない、ということは滅多にありません。
また、SAPが全世界標準の業務パターンを網羅している、と考えるならば、特殊なカスタマイズをすればするほど「ガラパゴスな業務」になってしまうと言えます。
グローバルスタンダードの業務・情報開示をするという観点からは、転記キーのあまりにも特殊なカスタマイズはプラスではありません。
同じような制御は転記キー以外でも可能
実は転記キーレベルではなく、勘定コードレベルで同様の項目制御も可能となっていることに注意です。
転記キー単位でざっくりセッティングするのか、勘定コード単位で詳細に設定するのかを最初に考える必要があります。
転記キー・勘定コードの両方の単位でカスタマイズするとカオスな状態になりがちです。
したがって、基本的な思想としては、転記キーは標準の状態で利用し、勘定コードレベルでカスタマイズするが正解です。
伝票タイプとの関連も考慮する
伝票タイプと転記キーの設定は異なるものの、両者は混同しがちな項目です。
この章で転記キーの解説は終わりますので、続けてこちらのページも合わせてお読みいただくことをお勧めします。