グループ経営管理の高度化に向けて~「セントラルファイナンス」の価値

SAP S/4HANA Finance(旧名称:Simple Finance)のリリースから6年。既にグローバルでは、本稼働数も100社を超えてきましたが、SAP S/4HANA Financeより可能となったグループ経営管理基盤の実現シナリオである「セントラルファイナンス(以下;Central Finance)」に対する注目が国内外で一段と高まっています。

本ブログでは、Central Finance特集として、Central Financeが求められる背景や特長、今後の展望について、具体的な取り組み事例を交えながら、ご紹介します。

なぜ、今、Central Financeなのか?経営管理システムの現状と課題

ここ数年、「グループ経営管理の高度化」が企業経営の主要課題であり続けています。グローバル企業であるか、ドメスティック企業であるかは関係なく、連結ベースの業績評価が定着した今、あらゆる企業が、経営環境が日々変化する中で、グループ経営情報をいかにタイムリーに、かつ、必要な粒度で可視化できるかを模索し続けています。

しかも、M&A等による業界再編が頻繁に発生し、新旧企業が入り混じり激化する一方の市場環境での競争を勝ち抜くためには、単に情報を集めて見るだけでは十分とはいえません。これに加えて、グループ横断で一貫した事業運営による競争力強化とオペレーション効率化が求められています。では、どのようにして実現するのでしょうか?

この目的の実現にITの活用が不可欠であることは明らかですが、通常、グループ内には複数の業務システムが存在しており、ERPのようなパッケージシステムと自社開発システムが混在していたり、ERP同士であっても、異なるバージョンが混在していたりするケースもあり、業務プロセスやマスタ・コード等もばらばらであることがほとんどです。こうした状況でグループの経営情報を集約して可視化するためには、グループの業務システムを統一することが理想的ではありますが、新システムに合わせた業務プロセスの標準化や共通業務システムの導入/マイグレーション作業などが必要となります。このため、グループ会社数が何百もあるような大規模でかつ組織/業務も複雑な企業グループでは、一足飛びにシステム統一を目指すのは現実的ではなく、手間と時間がかかってしまうのが実態です。よって、まずはグループ経営状況をタイムリーに把握し、マネジメントの強化を実現するアプローチが用いられてきました。

しかし、後述するようにそのアプローチで出来ることは「情報を集めて見る」ところまでです。グループ経営の高度化には「グループ横断の業務標準化」や「オペレーションの効率化」の実現も見据えたアプローチが必要になってきます。
そのアプローチこそがCentral Financeです。Central Financeは、連結会計や経営情報可視化だけでなく、明細情報に基づく事業状況の詳細な分析や、業績の予実・予測・フォーキャストの統制、資金状況の可視化、不正管理の強化などができ、グループ横断でのマネジメント強化に貢献できる全く違ったアプローチです。この点に着目した企業が具体的な取り組みを開始しています。ある国内製造業大手では、Central Financeを使ってグループ内にある6つのSAPシステムと数十の非SAPシステムに存在する経営情報を集約したグローバル経営財務プラットフォームを構築し、海外拠点を含むグループガバナンスの強化や、連結決算早期化、業績予測・シミュレーションなどの経営管理を高度化する取り組みを開始しました。また、長年SAPをグローバルで活用しているライフサイエンスメーカーも、グローバルでのガバナンス強化とオペレーショナルエクセレンスの実現を目指した業務・システムの標準化プロジェクトを開始し、最初のステップとしてCentral Financeによる経営可視化とマネジメント強化の取り組みを開始しています。

CF1

経営管理強化に向けたアプローチとCentral Financeの優位性

では、なぜ、Central Financeではそれが可能なのでしょうか?具体的なCentral Financeの話の前に、グループ経営管理システムを構築する他のアプローチを改めて確認したいと思います。下図にありますように、「連結パッケージ(以下、PKG)の活用」と「データウェアハウス(以下、DWH)の活用」です。

CF比較

まず、連結PKGの活用ですが、これはその名の通り、連結会計のための仕組みであり、制度連結、もしくは制度に近い管理連結の仕組みを作るアプローチです。既存の会計システムに与える影響は少なく、比較的短期間で構築できるメリットはありますが、基本的に月次バッチ連携の世界で、「今の経営状況をすぐに見たい」という経営層のニーズには応えられません。また集約する会計データの粒度は詳細な取引情報が確認できる明細レベルではなく残高レベルです。集めた連結データを様々な角度から分析するためのシステムを別途構築するケースがほとんどです。
次に、DWHの活用ですが、これまでは、このアプローチを使って、グループ経営管理の仕組みを構築するケースが多く見られました。もともとDWHは、あらゆるデータの収集・可視化・可視化のために利用することを目的にしているため、グループ横断での情報の可視化には一定の効果が出ることを期待できますが、データ構造やレポートは一から開発する必要があります。しかも、いくら開発したところで、このアプローチで出来ることは、「情報を集めて見る」ところまでであり、財務・管理会計機能や計画・予測機能等による高度なマネジメントを実現することはできません。

つまり、この2つのアプローチでは、「各会計システムとの連携部分の開発が必要」という技術的な課題がある以上に、グループ経営管理高度化を目指す取り組みが「情報の可視化」というレベルで止まってしまうのです。

Central Financeの具体的な技術要点

それでは、Central Financeの中身を見てみましょう。まず、「情報を集めて見る」という点に関して、上記の2つのアプローチに対して、明確な優位点があります。具体的には、既存会計システム、特にSAP ERPとの連携に関しては、インターフェースを開発する必要がなく、またリアルタイム連携が可能な仕組み(SLT)が用意されています。例えば、ある海外グループ会社が海外で運用しているSAP ERPに会計伝票を登録すると、リアルタイムで本社側のSAP S/4HANA側に伝票データが連携、登録されます。しかも、取引の生データである明細レベルで登録され、SAP S/4HANA側から登録元のSAP ERPへのドリルダウンも可能なので、詳細な分析や異常値があった場合の原因遡及も容易です。また、収集した情報の活用・分析という観点では、SAP S/4HANAが備えている豊富な分析機能を使って、各社のニーズに合わせた様々な分析軸による多次元分析が可能です。別途分析系の仕組みを構築する必要もありません。さらに、異なるシステム間のデータ連携で不可欠となる各種マスタコード(組織、勘定科目コード等)のマッピング・変換機能も標準で備えています。

CF構造

このように、Central Financeを活用してグループマネジメントの高度化ならびにスピードアップが可能となります。そして、ネクストステップとして、Central Financeの技術基盤であると同時に、経理財務やロジスティクス等の基幹業務プロセス全般が標準で実装されているSAP S/4HANAを活用しながら、グループガバナンスの強化とオペレーショナルエクセレンスの実現という経営管理強化の最終目的の達成を目指していくことが可能です。

具体的な取り組みが始まっています

こうした特長を備えるCentral Financeの実装に向けた具体的な取り組みをご紹介します。長年のSAPユーザーであり、年間売上高が約3兆円を超える、欧州の大手運輸サービス企業では、業界再編の流れの中で、国内外を問わず複数の同業他社と経営統合をした結果、グループ内に10数もの会計システム(SAP、非SAP含む)が立ち並ぶ状況となりました。既存勢力と新興勢力が入り混じる業界内の競争を勝ち抜くためには、業績の迅速かつ正確な把握から的確な経営判断を下すといった経営サイクルの強化/短縮化に加え、抜本的なコスト削減が必要でした。つまり、グループ経営情報の収集だけでなく、グループ横断での業務・システムの標準化によるオペレーショナルエクセレンスの実現と、グループ横断での予算管理・予実統制の強化も求められたのです。このような状況の中で、
・インターフェースのシンプル化/削減による開発/維持コストの削減
・グループ会計情報のリアルタイム収集
・各社バラバラに分かれていたオペレーションの統合(予算/計画、原価管理、等)
といったCentral Financeの特長に着目し、業務・システム統合の1stステップとして短期で効果を出すためにCentral Financeを採用し、導入を進めています。
同社のCentral Finance導入は、グループ会社の合意形成・標準化を行う時間を確保しながら早期にグループ経営管理の効果を創出するアプローチといえ、国内企業でも検討やプロジェクトが始まっています。

今後の展望

最後に、Central Financeの今後の展望について述べたいと思います。これまでご紹介したように、Central Financeは単なるレポート/分析アプリケーションを指すのではなく、SAP S/4HANAという基幹系/分析系が一体となった次世代基幹システム(デジタルビジネスプラットフォーム)を使った、グループ経営管理・経理財務業務の高度化に向けたアプローチです。このため、グループ経営情報の可視化にとどまらず、経営管理の高度化ならびに経理・財務業務の集約/標準化を進める手段の一つともなり得ます。上述した海外企業も「可視化のその先」を見据えてCentral Financeに取り組んでいます。例えば、Central Finance実装を通じて、「決済プロセス(支払/回収)の集約化」、「業務のシェアードサービス化の推進」、「統合リスク情報基盤の構築」などが期待されます。
このような多くの可能性を秘めたCentral Financeは、対象業務スコープの拡張/追加が予定されています。今後の展開にご期待ください。

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