戦略がすべて

はじめに

どの世界にも各々のルールと成功の方程式が存在する。無駄な努力を重ねる前に戦略を手に入れて有利に事を運べ。

本書は「僕は君たちに武器を配りたい」がベストセラーとなった著者が社会の諸問題を緻密に分析し、我々が取るべき選択を示唆した現代社会の「勝者の書」である。

第1章 ヒットコンテンツには「仕掛け」がある

AKB48の戦略

「人」を商品として販売するタレントビジネスはその「人」を管理運用することによって利益を生み出すが、このビジネスには3つの「壁」がある。

1.どの人材が売れるか分からない

2.人間なので稼働率の限界がある

3.売れるほど報酬が上がるのでコストもかかる

以上の壁を、打開する方法は

複数の人材をまとめてパッケージングして売る。

良い例がAKB48です。

様々なキャラクターが居れば誰か当たり、「総選挙」というスキームは市場のニーズを分析しなくても消費者が自ら好みを示してくれる。稼働率も複数人居るのでクリアできる。それにAKB48というグループのマーケティング能力に個々の人材は依存しているのでAKB48に居ることで付加価値が生まれている。

AKB48という土台、場を作ればリスク軽減と複数の製品やサービスが展開でき、更新可能な環境が構築できる。

一般企業で言えば、人材を会社がきちんと教育すれば優秀な社員に育つと信じられているが、移り変わりが激しい状況に対応できるようなコモディティ化した平均的な人材にニーズはない。非常に高度な技術と特殊な才能が求められるので、いろんな人材にチャレンジさせて市場の反応や時代のニーズに合わせた方が合理的です。つまり、常に競争させるのです。自らの能力を高め、優れた人材として評価を受け、高い報酬を得たいという者だけが参加し、競争が嫌な者は低賃金でコツコツ働く働くしかないのです。

プラットフォームとして考える戦略

プラットフォームを作り、ネットワーク化することで顧客との関係性を強化でき、ビジネスを有利に運ぶことができる。

鉄道会社というプラットフォームが鉄道を敷いて、その周辺の街を開発することで大規模な集客を行い、様々なビジネスを誘致する。

Googleや Yahooなどのプラットフォーム会社はユーザーのニーズや行動履歴を収集してコンテンツ配信を効率よく行なっている。その他、iTunes、楽天市場、クラウドワークスなどもプラットフォーム戦略の典型です。

プラットフォームがブランドメッセージを発信し、本来のサービスを超えたスタイルやクオリティを持てば成功です。プラットフォームが強くなれば利益を独占し、リスクも回避できる。

例えば、アップルは機能的には同等でもブランドメッセージが確立されている。

鉄道会社では東急や阪急が、沿線に住んでいるということ自体がブランドになっています。

ブランド力を高める意味では国家であったり個人でもプラットフォームとしてどのような価値があり、サービスを提供すべきで、どうやったら必要とされるのか戦略を練ることができる。

2020年東京オリンピック招致の戦略

日本は国際的なプレゼンテーションは苦手とされていたが東京で五輪を開催する価値をアピール出来たことが勝利に繋がった。

安倍首相のスピーチは内容、発音、印象づくりなど注意が行き届いていた。

五輪の本質を見抜いていた。プレゼンテーションにおいては経済効果やメダルの数などは自国中心な考え方であり、五輪の精神は国家間のメダルの争いなどない。本質はあらゆる国の人がスポーツに参加して国際交流を深めることにある。日本はこれをしっかりアピール出来た。

1964年の五輪は高速道路や新幹線などインフラの整備が進み、テレビなどの個人消費が伸びたが2020年の五輪はインフラは限定的になる見込みなので、メリットとリターンは日本というブランディング効果を期待したい。ブランド価値こそが日本再生の鍵です。

第2章 労働市場でバカは「評価」されない

これからの時代、たいていの学習可能なスキルは弁護士や医師であろうと高報酬につながりません。

大企業と中小企業の給与の差はスキルの差ではなく、従業員一人当たりの「付加価値額(生み出した利益の額)」が、大企業の方が高いからです。

ビジネスにおいて多くの利益の分け前を得られるプレイヤーは、資本家の側である。彼らは儲ける仕組みを所有していて、ビジネス全体の利益と損失を帰属されている。

儲ける仕組みの外にいるコモディティは高い報酬を得ることはできない。

ゲームの戦略

RPG(ロールプレイングゲーム)の世界観やメカニズムは学校教育で教えられるものよりも遥かに現実の社会、とりわけ資本主義のルール(職業システムの分業、熟練、資本蓄積、設備投資、ショートカット)を教えている。ゲームの攻略法の取り方は実社会のパフォーマンスの能力にも関係している。

投資家の趣味ではカードゲームが人気がある。リスク管理や確立計算、他人の心理を読むことが投資の思考様式に似ているところです。ウォーレン・バフェット、アインホーンはカードゲームが得意です。

コンピュータにできる仕事はやめる

ネットメディアのコンテンツ戦略はコンピュータのアルゴリズムを用いてデータによって精度を上げているので双方の関心広告を高確率でマッチングすることができる。広告を頻繁に差し替えたりできる。一方、既存メディアは制作者の考えやセンス、勘に基づいて良いと思ったことをたくさん作り、売れたものを伸ばす「多産多死型」です。顧客情報も持っていないので一度買った顧客に対する継続顧客化の努力はできない。雑誌媒体は一度印刷してしまえば変更することは難しい。

コンピュータを凌ぐ編集者というのは、コンテツ精査と販売戦略の両方に通じ、かつそれを有機的につないでヒットを生み出せる能力が必要です。単なる仲介役としての編集者はコンピュータに置き換えられます。

出版業界はデータベース化を押し進めて、必要な判断を人間が行うハイブリッドモデルが有効であると考えるべきです。

人材市場の戦略

ビジネスにおいて企業を評価する3つの要素

商品市場、資本市場、人材市場

商品市場と資本市場は言うまでもなく価格や業界シェア、時価総額や株式など業績の指標として有益である。

それよりもむしろ人材市場こそがその企業の指標として有益な場合がある。その理由は人という財産を長期に渡って会社にコミットさせるため、より真剣にその投資先を検討している。それに会社の内実により去っていく人材を見て会社が傾く前兆かどうかが判断できる。

人材市場の変化はベンチャー企業において如実である。実は傾きかけている企業は大量採用が見られたり、大量に辞めたりするケースが多い。元○○の活躍が目立ち始めたら、○○という企業が凋落する前兆と推測できる。

スポーツ界のシゴキやパワハラなどの古い体質に反旗を翻す行動は一時的にはその競技は敬遠されるが、長い目で見れば自立した個人が出てきていると捉えるとその競技は発展する可能性がある。

二束三文の人材とならない戦略

自分の労働をコモディティ化させないことが重要です。そのためには新しい仕組みのアイデアを持つことを目指すべきです。企業で働く人は会社を時代の変化に即して変えていくことに努力する。社内でうまく変化を起こせなかったらその時は会社を去ろう。そして新しい側の立場に立つことを考える。

若い世代の人たちは自分の出番が回ってくるのを待つのではなく、年長の責任ある役職の人を取り込んで、その人を立てつつ実質は自分たちが主導しているくらいの技を身につけて欲しい。

第3章 「革新」なきプロジェクトは報われない

マネジメントの観点からオリンピックの戦略を考える

勝てる土俵を見極めて楽勝でできることを徹底的にやる。マイナーな競技で集中して育成する。

勝てそうな領域を見極めたら資源を投入する。ロンドンオリンピックに向けてはナショナルトレーニングセンターを建設したように「場」を作る。

次にサポートスタッフへの投資をする。具体的には映像解析、戦術分析、マッサージ、カウンセラー、栄養士などで選手のバックアップを強化する。

金も投資する。マイナー競技では国際大会の経験を積むために参加費や渡航費、滞在費を援助する。

オリンピックはアスリート個人の資質や努力に頼りがちだが、組織としてバックアップしてあげれば個人の能力を最大限に引き出し、メダルへ大きく前進する。戦略的思考とはこの哲学に貫かれている。

多数決は不毛である

ノーベル受賞者の山中伸弥教授のiPS細胞の研究は最初、誰もが反対した。「ハリーポッター」も最初、多くの出版社から断られた。このようにイノベーションは少数意見から生まれることが実証されている。私たちは小学校から多数決の価値観で教育されている。しかしアイデアや新発見は民主主義的考えや効率的とは真逆なところからしか生まれてこないのです。

人脈の戦略

トップマネジメントは、幅広く多様な知識や能力を持つジェネラリストでなければならない。自分が専門性を持つよりも、専門性を持つ人材にアクセスできる方が大事です。多様な人的ネットワークを持つことは個人であっても同様に大事です。

トップは自分に賛同する人材で固めるより、「異見」を持つ人を取り入れることが質の良い意思決定を生む。個人としても付き合っている人間が同じような人間ばかりでは新しいものは生まれません。

日本の未来予測は北海道を観察していると見えてくる。実際に札幌は消費財のテストマーケティングに使われることが多い。アイデアの源泉、実験場として利用することができる。

第4章 情報に潜む「企み」を見抜け

ネットにおいて「炎上」を意図的に起こしてビジネスを行なっている場合がある。ネットのビジネスモデルはPV(閲覧数)による広告収入と、有料課金モデルがある。PVの広告モデルは関心を集めるほど売り上げが増えるので極端な意見や炎上により注目を集めに走る。

主張が極端であるほど、一部の人間を深く「ハマらせる」構造になっているネットの世界では危険な思想を助長させやすい。

新聞による誤報は現在ではネットによる反論ができるので昔に比べて明るみに出やすくなっていて、今後も減ることはないです。しかも新聞も有象無象のネットのニュースサイトの競争に巻き込まれてしまっていて質の低い記事が増えた。

メディアの企みにひっかからないように読み手側は自説と反対の考え方を検証することは有効です。自説の裏をとるようなことをすると、ついつい自分にとって都合のいい事実を優先的に受け入れてしまう。

インターネットは毎日膨大な量の情報を流している一方で、コンピュータのアルゴリズムにより自分に心地よい情報を受けることが多くなり、その結果ネット右翼のような同調する者が集まって互いを肯定しあい、反対意見を非難し排除するうちに考え方が過激になっていく。ネットにより多くの情報を得て世界を繋げるはずが、自分の狭い認識をお互い再確認しあう社会を生むことにもなっている。

多くのイノベーションは、他の異なる考え方を組み合わせることによって生まれることから自分の知らない思考、学問、知識、思想に積極的に触れるようにするべきです。

第5章 人間の「価値」は教育で決まる

企業の採用には「育成(年功序列)」型と「競争(能力主義)」がある。

優秀で才能のある人材は能力主義に集まる。古い体質のままの企業は「最近の学生はレベルが下がった」と嘆くが、実は優秀な人材が他社に流れているだけです。

大学の教育は意味を失うもしくは、もう既に失われている懸念もあるが、先端企業は大学で身につけた知識、専門性はあまり評価せず、学問を学ぶことを通じて身につけた論理的かつ体系的な思考力、視点の多様性、文章を中心とするコミュニケーション能力に期待している。

大学のトップには、広い知識、ネットワーク化能力、コミュニケーション能力が必要です。特に東大、京大のトップは高校以下の中等教育にも影響を与えるので最高の教養人である必要がある。

部活体験がその後の行動を支配していることがある。野球部のようにミスをすると厳しい競技は運動神経が優れていてもその後のキャリアはリスク回避的になるかもしれない。一方、ラグビーはプレーが止まらない競技なので臨機応変の対応が必要で、倒れても立ち上がるので社会でも困難に立ち向かい臨機応変に対応できる人材になることが多い。

大学入試改革は入試対策も変えざるを得ないので必然的に高校教育も変わる点で意味がある。

本来、大学で学ぶことの一つには、解が一つとは限らない、もしくは定まっていない課題について自分で試行錯誤し結論を導き、他者に説明すること。

第6章 政治は社会を動かす「ゲーム」だ

資本主義は全体がよくなるのであって全員がよくなるわけではない。むしろ、市場競争によって勝ち組と負け組の格差が拡大してしまうので財政を通じて所得再分配を行い、敗者に対するセーフティーネットを準備する。敗者とは企業ではなく個人です。淘汰される企業はコストに見合ったものを提供できていないので、社会的資源を無駄にしている。これを保護するのは社会的に有害です。

地方自治体も提供できるサービスをめぐる競争によって淘汰されるべきです。市町村の合併がもっと進んで無駄を無くすべき。

現代の日本において政策で差別化をするのは困難です。従ってニッチな政策かブランドイメージで差別化するしかない。

日本の地方政治家はコモディティ化している。彼らの評価能力が問われることはない。よって組織は構造的に無能な人であふれる。

第7章 「戦略」を持てない日本人のために

日本人は目の前の仕事に打ち込むのに得意であり、戦術や作戦レベルになりがちです。また競争においても同じ方向に向かって競争する、またはコースが決まっている、つまり頑張った人が勝つものは得意です。

日本人はレベルアップして戦略的思考を身につける必要がある。競争を違う視点で評価し分析して他人とは違うアプローチや張り方をすることです。戦術や作戦で失敗しても戦略で補うことが可能なのです。

まとめ

絶対的な力があれば猪突猛進で困難をある程度突破することはできるが、現在の日本、個人としてもパワーでは劣る者が勝者になろうとすれば戦略を練るしかない。勤勉な精神をもつ日本人が戦略を身につければ対等以上の成果が期待できるはずです。

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