雇用制度、在宅前提に 「ジョブ型」や在宅専門の採用

新型コロナウイルス感染拡大を機に普及した在宅勤務の定着に向けて、企業が制度の見直しに動き始めた。資生堂富士通が業務の成果で評価する人事制度に本格的に移行する。在宅勤務に限定した社員の採用を始める企業も出てきた。在宅勤務の広がりで、出社して働いた時間を前提とする日本型の雇用制度が変わり始めた。

国内企業の多くは労働法制の制約もあり労働時間に応じて賃金を支払う仕組みが長く定着していた。しかし、会社でない場所で働く社員を時間で管理するのが難しく、労働基準法で定められた残業代支払いルールに抵触する恐れもあった。

こうした問題を解決するため、企業は職務定義書(ジョブディスクリプション)で社員の職務を明示して、その達成度合いなどをみる「ジョブ型」雇用の導入を進めている。

資生堂は少なくとも約8000人のオフィス勤務の一般社員を対象に2021年1月から「ジョブ型」雇用に移行する。このほどオフィス出社人数を5割にする在宅勤務継続を決定。管理職では今年1月に導入済みの「ジョブ型」の対象を広げる。資生堂は「遠隔でも職務に基づく評価がしやすくなる」としている。

富士通も20年度から国内の課長職以上の約1万5000人を対象に「ジョブ型」雇用を導入し、その後他の社員にも広げる。時田隆仁社長は「新しい働き方では職責に応じた評価に変わらざるを得ない」と語る。

既に日立製作所が約2万3000人を対象にした「ジョブ型」雇用の導入を表明。NTTグループも成果連動の評価制度を検討する。主要企業が成果主義へ移行することで、時間管理をベースとする日本の労務管理のあり方も変わりそうだ。

働く場所を選ばない在宅勤務が定着すれば、多様な人材を獲得できるチャンスも広がる。ソフト開発テストを受託するSHIFT(シフト)は、在宅勤務専門の正社員エンジニアの採用を開始した。シフトは「拠点を構える地域に限定しないことで、広く優秀な人材を採用できる」と説明する。

オフィスに通えない遠隔地に住む人材も採用できるように、さくらインターネットは出社を前提としない雇用契約を今後、一部の機器保守要員を除いた新卒社員と結べるようにする。レンタルサーバーなどを手掛けるGMOペパボは6月から約330人の社員全員が原則在宅へと移行。「国内ならどこに住んでもいい」と採用条件も変えた。

社員へ支払う手当も見直しが進む。

AGCは在宅勤務に伴う社員負担費用の半額を、1人当たり年最大12万円まで支払うことを決めた。ネット回線の利用料や作業用モニターの購入費などが対象。福利厚生サービスに使える社内ポイントの適用範囲を、在宅勤務関連にも広げる。

メルカリは自宅からオフィスまでの定期券代の一括支給をやめた。浮いたお金で、1人当たり半年間で6万円の「在宅勤務手当」を支払う。グループ従業員1800人の大半を対象とする。

ただ制度の見直しが進む一方で、在宅勤務を定着させるには課題も残る。日本生産性本部の調査では、在宅勤務について約6割が満足していると回答する一方、貧弱な通信環境などを背景に6割強が仕事の効率が下がったと答えた。コミュニケーション不足からメンタルヘルスを崩す例もある。

長年、日本企業は出社や時間管理をベースにした雇用制度を維持してきた。「コロナを機に広がる多様な働き方の実現は企業だけでは難しい。法制度を含めた労働行政も変化を迫られる」(八代尚宏・昭和女子大副学長)。官民を挙げて社員のフォローが求められる。

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