【IT業界】ブラック企業が多い?IT会社での働き方と業界の実態
- IT業界で働いている人や、これからIT関連の仕事を始めようとしている人は、次のような悩みや疑問を持っているのではないでしょうか。
「働いているIT系がブラックすぎる」
「ITはどこの会社もブラックなんだろうか」
「ITの他の職種についても知りたい」
2017年に行われた調査では「ブラック企業だというイメージがある業種ランキング」で、「IT・メディア」が 1位に輝くなど、IT関連職には過酷な仕事のイメージが強く持っている人も多いようです。
結論から言うと、他の業界と同じようにIT企業にもブラックな会社はあります。
そこで、この記事ではIT企業におけるブラック企業の実態について、幅広い切り口から解説します。
自分の今後のキャリアをより良いものにするために、記事をよく読んでしっかりと内容を理解してください。
今働いている会社がブラックで、
・未払いの残業代を取り戻したい
・今いる会社から抜け出したい
など、何かすぐにでも行動したい人向けには、3章で取るべき行動について解説していますので、そちらからご覧ください。
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1章:IT企業におけるブラック企業の実態とその背景
最近では「ブラック企業」という言葉は、色々なシーンで耳にしますが、ひと言で説明すると
利益のために社員を都合よく使い潰そうとする会社
と言うことができます。
この章では、まずIT業界ではブラック企業は多いのか、どんな特徴があるのといった点を解説します。
1-1:「IT企業はブラックが少ない」は間違い
それでは、早速IT業界におけるブラック企業の実態について見ていきましょう。
社員ITは待遇が良く、ブラック企業は少ないって聞いてたけど…。
このように「IT業界=ブラックな会社が少ない」と言われることがありますが、それほど簡単ではありません。
ブラック企業に関する様々なアンケート調査などが行われていますが、本当にブラックな会社は、そもそも調査の対象に入っていなかったり、会社が回答を都合よく回答を変えたりする例も珍しくありません。
弁護士私の知る範囲では、IT業界にもブラックな会社は多く存在し、その過酷さは他の業界と比べても悪いと言えることもあります。
次節では、そうしたブラック企業の事例をいくつか紹介します。
1-2:ブラックなIT企業の実例
まずはIT業界のブラックな実例について紹介します。
【長時間残業を原因とした過労死(システム開発)】
都内のIT企業で働いていていた、28歳の男性社員が2017年にくも膜下出血で死亡し、池袋労働基準監督署が過労死として労災認定した事例がありました。
2013年に入社した男性は17年にチームリーダーに昇格し、この時から裁量労働制を適用されていました。労基署によると、男性は死亡する前、最長で月184時間の残業があったとしました。繁忙期には連続36時間の勤務もあったということです。
【長時間労働とパワハラ・退職時の嫌がらせ(Web広告営業)】
インターネット広告業界で営業として働く女性社員は、日中は営業活動を行い、夜に会社に戻ってから報告書作成などの事務仕事を始める生活を続けていました。
男性上司からは、成績不振などに関して露骨なパワハラ・嫌がらせを受けており、心身とも疲弊したこの女性社員は転職を決心。その旨を会社に伝えると「経費として使ったお金をすべて返せ」「同業(IT関連)には3年間転職できない」などと言われたというブラックな事例がありました。
【残業代の未払い(ソフトウェア開発)】
神奈川県にある従業員5人以下の小さなソフトウェア開発会社に勤めていた男性から、未払い残業代の支払いを求め相談に来たケースがあります。
この会社では基本給に定額の残業代が含まれていましたが、その上限は毎月10時間まで。入社してから1度も月の残業時間が50時間を下回ったことがなく、40時間以上のサービス残業を続けてきたことになります。会社側は「就業規則に同意している」と主張しましたが、こうした従業員が不利になる規則は無効と考えられます。
私が知っている範囲でも、こうした例を挙げればキリがありません。IT企業は決してホワイトな会社ばかりではないことがわかってもらえたのではないかと思います。
次節ではIT関連のブラック企業の実態について、職種や会社規模、企業年数などの切り口からより詳しく考えていきます。
1-3:ブラックな職種、会社の特徴
職種や会社規模など、もう少し細かく考えると、ブラックになりやすい会社の傾向が見えてきます。
ここからは
・職種
・会社規模、企業年数
という2点から、IT業界のブラック企業の実情について説明します。
1-3-1:職種による違い
IT業界では、次のような職種でブラックな会社が多い知られています。
・ITエンジニア/プログラマー
・Webプロデューサー/ディレクター
・営業職
・ITエンジニア/プログラマー
エンジニア・プログラマーの仕事は、
・クライアントに振り回される
・人員が不足している
・一度決めた納期は動かせない
といった特徴があり、長時間労働が常態化しているケースが目立ちます。
そのため未払い賃金や長時間労働といった問題が起こりやすいほか、職場環境が荒れパワハラや社内でのいじめが起こるといった事例もみられます。
・Webプロデューサー/ディレクター
これらの職種に携わる人は、
・クライアントの要望を吸い上げ仕様を決定
・社内のデザイナーやエンジニアに仕事の割り振り
・外部スタッフへの仕事の発注
など業務内容が多岐にわたります。
クライアントの要望が二転三転したり、社内からの反発が起こったり、と板挟みになることも多く残業が長くなり、心身共に疲弊してしまうケースもあるようです。
・営業職
他の業種と同じように、IT業界においても営業職はブラックになりやすい一面を持っています。
営業職は、
・出先から戻った後に多くの事務作業が残っている
・成績がはっきり見えやすく、成果主義になりやすい
という側面があります。そのため、残業時間が長くなりやすく、成績が伸びない社員に対して上司がパワハラまがいのプレッシャーをかけるようなケースもあるといいます。
1-2-2:会社規模、企業年数による違い
・会社規模
中小のIT企業は大きな会社の下請け仕事を引き受けることが多くあります。

小さな会社が仕事を受注するためには、厳しい日程や低く設定された発注費用でも受け入れなければならないケースも多く、こうしたシワ寄せが社員に及ぶことも少なくありません。
またITエンジニア業界では「多重下請け構造」と呼ばれるシステムが見られ、ピラミッドの下へ行けば行くほど社員にとって過酷な職場となります。
また中小企業の経営者の中には、利益を上げるためなら労働法を守らないブラックな考え方を持つ人物もいます。
・企業年数
企業年数について言えば、ベンチャー企業がブラックになりやすいとする指摘もあります。
創業から年数が経っていないベンチャー企業は、
・少人数で事業を行うので業務量が多く、業務範囲も大きい
・収益を上げるために新規事業を次々に展開する
・急な成長に人的リソースが追いつかない
・経営陣や創業メンバーが、社員に自分たちのような働き方を求める
といった背景から、社員に無理な働かせ方を求めたり、経営陣が成績の伸びない社員を不当に暑かったりするブラックな職場になりやすい面を持っています。
社員IT業界のブラック企業の実情についてわかった。でも、どんな風に見分けたらいいんだろう。
弁護士次章ではブラックなIT企業の見分け方について解説します。
2章:ブラックなIT企業の見分け方
ここからはブラック企業の特徴について
・労働時間、賃金に関する特徴
・勤務体系、社風に関する特徴
の2つから説明します。
2-1: 労働時間、賃金に関する特徴
まず、労働時間・勤務体系について見ていきましょう。
ブラックな会社は会社のためなら社員に無理をさせようとするので、多くの特徴が見られます。
2-2-1:長時間残業、休日出勤が常態化している
他の業界と同じく、IT業界でもブラックな会社に良く見られるのが社員の長時間労働・休日出勤です。
特に納期前の追い込み時期になると毎日の残業が長くなり、1ヶ月休みがないといったケースもあり、社員が心身を消耗する原因になります。
残業時間については、次のような記事で詳しく解説していますので、あなたに一番近い状況のものをご覧ください。
・1ヶ月の残業時間が45時間以上
残業45時間って長い?残業の違法性の判断基準と会社都合退職になる条件
・1ヶ月の残業時間が80時間以上
命の危険があります!80時間の過労死基準と現状を変えるたった1つの方法
・1ヶ月の残業時間が100時間以上
残業100時間は超危険!過労死基準と100時間残業した場合の心身への影響
2-1-2:サービス残業を強いられている
ブラックな職場は、社員に長時間残業させても社員に残業代を支払わないことが良くあります。
ブラックなIT企業で良く使われる手口としては
・年俸制なので残業つかない
・職務手当が残業代の代わり
・みなし残業代を悪用している
・タイムカードを決まった時間に切る
といったものがあります。
いずれの理由も社員に残業代を支払わない理由にはならないので、思い当たる人は3章で説明する「残業代の請求方法」もご確認ください。
それぞれの手口については以下の記事で詳しく解説しています。あなたの会社が使っている手口がある場合は参照ください。
・年俸制の悪用
・職務手当の悪用
・みなし残業代
2-2:勤務体系、社風に関する特徴
次に勤務体系や社風に関する特徴を解説します。
2-2-1:違法な雇用形態を適用する
ブラックな会社は、プログラマーを残業させるために
・裁量労働制
・固定残業代制(みなし残業代制)
・フレックスタイム制
といった制度を悪用するケースがよく見られます。こうした制度の適用のどこに問題があるのか、順番に見ていきましょう。
裁量労働制
裁量労働制とは、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ会社側と決めた時間を労働時間と「みなす」制度です。
例えば、会社側と1日のみなし労働時間を8時間と決めていたら、10時間働いた日でも働いた時間は8時間とみなされ、残業代は発生しません。

しかし、この制度は誰にでも適用できるわけではなく、当てはまる職種が厳しく制限されています。
裁量労働制の適用職種については、次の文章で説明していますのでご確認ください。
SE・PG必見!【IT業界における裁量労働制】法律から見る違法性の高いケースとは
固定残業代制(みなし残業代制)
固定残業代制(みなし残業代制)とは、あらかじめ一定の残業時間分の残業代を最初から給料として払っておく制度です。
例えば、次のような求人があった場合、
A社:基本給32万円(60時間分の残業代5万円を含む)
B社:基本給27万円(残業代別)
一見、A社の方が社員の残業代を確実に支払ってくれる良い会社のように思えますが、B社で通常の計算をもとに残業代をもらえれば、A社よりも給与は高くなります。

またA社のような契約では、60時間を超えないと表記にある32万円が支払われなかったり、何時間残業をしても固定残業代の5万円以上が支払われなかったりするケースもあります。
固定残業代制については、次の記事でも詳しく解説していますのでご確認ください。
フレックスタイム制
フレックスタイム制は、「社員が自分で始業時間と終業時間を決めることができる働き方」です。
この仕組みを利用する場合も、制度の要件を満たさない適用がなされていれば残業が認められ、残業代も発生することになります。
フレックスタイム制については、以下の記事でも解説していますので、自分の働き方が当てはまる人はご覧ください。
フレックスタイム制とは?誰でもたったの5分で理解できる正しい意味
2-2-2:社員の勤続年数が短い
IT業界は、次のような理由から比較的転職が多いとされています。
・若い会社が多い
・終身雇用の文化がない
・転職がキャリアアップにつながりやすい
・技術があれば他社でもすぐに仕事ができる
平均勤続年数が10年を切る会社が珍しくありませんが、ブラックな会社の場合は極端に社員の勤続年数が短くなる傾向があります。
例えば、全社員の平均勤続年数が4年を切るような場合には何か社員が定着しない理由があると考られます。
2-2-3:パワハラ・セクハラが横行している
ブラックなIT企業では、営業成績や売上のアップのためや、社員を洗脳して指示に従わせるためにパワハラが常態化することがあります。
厚生労働省の類型では、パワハラが6つの項目に分けられています。暴言や暴力だけでなく精神的な攻撃などもパワハラになります。

こうした嫌がらせに思い当たる人は、次の記事で対処法を解説していますのでご覧ください。
3章:ブラックな企業で働く人がすぐに取るべき行動
ここまで読んで、今働いている会社がブラックだとわかったあなたは、今すぐ何か行動を取りたいと考えたのではないでしょうか。
この章では
・会社で働き続ける方法を考える
・転職の準備をする
・未払い残業代を請求する
という3つの方法について解説します。
3-1:会社で働き続ける方法を考える
社員今いる会社はブラックな部分はあるけど、できることなら働き続けたいな。
今の会社に愛着があり、働く環境が改善されれば、会社に残りたいという人もいるのではないでしょうか。
そうした場合は、
・上司会社に相談する
・社内での異動を検討する
といった方法を取ることもできます。
社内でも自分がいる部署が特にブラックで、外からはその状態がわからないような場合は、別の上司や法務部門に相談することで状況が改善される可能性があります。
また、社内での異動がオープンになっている会社であれば、面倒ごとを避けて別の部署に移るという手もあります。
ただ、どちらも会社全体がブラックな場合は状況が改善されないばかりか、さらなる嫌がらせを受けるケースもあるので注意が必要です。
3-2:転職の準備をする
社員これ以上、今の会社には居続けられない。新しい職場を探したいな。
今いる職場を飛び出し、新しい会社に転職しようと思ったら、
・転職活動をして就職先を探す
・退職手続きを進める
といった行動をとる必要があります。
転職活動については、2章のブラック企業の見分け方を理解し、自分に合った会社選びを進めましょう。
それと前後して必要になるのが、今いる会社の退職手続きです。
退職の流れは、次のようになっています。

会社側に拒否されても、あなたには「会社を辞める権利」があります。会社の圧力や甘い言葉に惑わされずに、しっかりと自分の意思を貫きましょう。
退職時の注意点については、以下の記事を参照してください。
今すぐ辞めよう!ブラック企業を穏便かつ確実に退職する方法と2つの注意点
転職については、次の記事でも詳しく説明しているのでご覧ください。
5分で分かる!ブラック企業から転職する流れと知っておくべき2つのこと
3-3:未払い残業代を請求する
転職することを決め、今の会社を辞める際には本当はもらえるはずだった残業代の請求を忘れずに行うことをオススメします。
うまくいけば、あなたの手間がほとんどかからないのに200万を超える大金が戻ってくる可能性もあります。
残業代は、

という式で計算します。
基礎時給は、月給制の場合は1か月の給料を所定労働時間(※)で割って計算できるので。
※雇用契約で定められている1ヶ月あたりの平均労働時間のこと。一般的に170時間前後となっています。
月給が25万円の人が月に60時間残業をしていた場合は
25万円÷170×1.25×60=11万294円
という大金になります。
もし過去2年間60時間残業していた場合は、260万円を超える金額になります。
残業代請求には
・自分で請求する
・労働問題専門の弁護士に依頼する
という2つがありますが、証拠集めや残業代の計算、会社との交渉などに時間を使うのはとても大変です。
そのため手間がかからず、残業代を取り返せる確率も高い「弁護士への依頼」をオススメします。
残業代請求の方法については以下の記事をご覧ください。
【在職中でも退職後でもOK】残業代を請求するための完全マニュアル
残業代請求の際の証拠集めについては以下の記事もご覧ください。
【未払い残業代を取り戻す3つの方法】請求手続きのポイントと集めておくべき証拠一覧
まとめ
いかがでしたか?
最後に今回の内容について、もう一度振り返ってみましょう。
ブラック企業とは、
利益のために社員を都合よく使おうとする会社
です。
新しい会社が多いIT業界にもこうした会社は少なからずあることを説明しました。
そして、IT業界特有のブラック企業の特徴は
・労働時間、賃金に関する特徴
・勤務体系、社風に関する特徴
といった面に現れることを説明し、最後にブラック企業で働くあなたが今すぐ取るべき行動の選択肢を解説しました。
転職を考えている場合は、少しの手間で多額の残業代が戻って可能性もあるので忘れないように手続きしましょう。
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あなたは、こんな悩みをお持ちではありませんか?
- これから退職予定で、未払い残業代を請求したい
- すでに退職しているが、以前勤めていた会社に残業代を請求したい
- 自分の残業代、残業時間に納得がいかない
会社がおかしい・不当ではないかと感じたら1人で悩まずに、残業代請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。残業代の時効は2年なので、時効になる前に早めに行動することが大切です。
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