映画「ルパン三世 FIRST」考察

私と息子で映画を見てきました。以下、感想です。

私「今作ではルパンシリーズに多く携わった大野雄二が音楽を担当しており、エンドクレジットでも異例といえるくらい上位で”音楽 大野雄二”とクレジットされていたよね」

息子「キャラクタームービーにおける音楽って1番大事でさ、いつも語るけれどコナンで『僕は江戸川コナン 探偵さ!』みたいな前口上や説明って、もはやコナンを見に行く層には説明不要なんだよ。だけれど、毎回入れているのは”お約束が最大のキャラクタームービーらしさを生み出す”ということを理解しているから

私「その例えは乱暴だけれど、今作もOPアニメーションが非常にカッコよかったし、入り方もベストだったよね。アニメ版に親しんだ人であればあるほど『あの曲がかかってくれた〜』という感動もあるのではないでしょうか?」

息子「郷愁感を誘うよねぇ。

 一方で何度も語るように物語性に最先端のものは一切感じない。

 言ってしまえばわかりきっているお約束の集まりなんだよ。だからこそ”ルパンらしい”とも思える。

 ただし、後半はSF色をやりすぎたかなぁ……あの空飛ぶ船のシルエットなどは面白かったし、FFを連想したけれど、でもちょっとルパンとしてはやりすぎな印象かな」

映画「ルパン三世 THE FIRST」オリジナル・サウンドトラック『LUPIN THE THIRD 〜THE FIRST〜』
THEME FROM LUPIN III 2019

THEME FROM LUPIN III 2019

  • You & Explosion Band
  • ジャズ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
アニメーションとしても試練だった”3つの試練”

その脚本でも特筆すべき点はいくつかあるの?

”アニメーションとして面白さの追求”を目指した脚本だったのではないだろうか?

主「その象徴となるのが”3つの試練”のシーンだ」

私「重力を無視する部屋、光の道、レーザーのたくさん打ち出される空間を抜ける、というものだね」

私「まず”重力を無視する”といのは独特の浮遊感や、上下が逆さまになったアニメーションならではの面白さの追求に思える。

 また光の道は斬鉄剣という超便利アイテムを放棄させるための試練でもあるけれど、あの部屋の光の形がとても美しくて、映像としても見どころが多い。

 そしてレーザーのたくさん打ち出される空間は、文字通りこの映画で1番の見せ場にもなる。あそこで”ルパンはかっこいい!”と思わせられなかったら、ただの敗北です。その3つの試練に、この映画は勝ったと言えるのではないでしょうか。

 あとはアクションシーンのみならず、レティシアに祖父の真実を告げる船のシーンの静かさなども見どころがあったね

私「じゃあ、演出ありきな脚本だったのではないか? という話だね。

 あのレーザーのたくさん出るのはルパンらしいギミックだとも思ったかなぁ。それこそ『DEAD OR ALIVE』でもあったような……もう見たのが十何年も前だから曖昧な記憶だけれど……」

私「山崎貴の脚本はつまらない、というのが通説だし、それに対しては自分も納得する部分も多い。今作もセリフがスッゲェつまんなくて、そこは不満。声優陣の演技でカバーしているし。

 でも”映像演出のための脚本”と考えると、とても考えられているようにも感じられる。

 その意味ではアクション映画に近いものがあるんじゃないかなぁ……アクションを魅せるための脚本であって、その出来そのものをグダグダ語るものではないしね」

本作の物語が持つ批評性〜過去と現在の物語〜

じゃあ、この作品の物語って一切の批評性がないの?

う〜ん……実はすごい意欲作な印象もあるんだよね

息子「え、ここまでの話を全て撤回することになるんじゃない?」

私「例えばさ、今作のキャラクター像って以下のようにまとめられる」

  • ルパン三世→ルパン一世の縁にけじめをつけに来る
  • レティシア→祖父の縁にけじめをつける
  • ゲラルト→過去のナチス政権の復活をもくらむ

私「ナチスというのはアルセーヌ・ルパンがフランスを代表するキャラクターということもあるのか、ルパン三世では何度も取り上げられた敵役だから、何らかの作品のセルフオマージュの可能性もある。

 だけれど、こうして並べるとみんな”過去の因縁によって動かされる”という物語であるわけだ」

息子「ふむふむ……現代でこれだけ血の縁を描くのも珍しいのかな?」

私「ルパン三世というのはアルセーヌ・ルパンの才能を受け継ぎつつも、その縁からはある程度自由である。自分の大好きな『ワルサーP38』の名言を借用すれば『自由でいるためにはやらなければいけないしんどいこともあるんだぜ』ってことで、自分が自由でいるために今回も行動したとも言える」

ルパン三世 TV SPECIAL ワルサーP38

レティシアは血の縁に縛られているんだけれど……2人の祖父の間で揺れている

私「ランベールは描き方が乱暴だったけれど、孫への思いと自分の野心に揺れる人間臭い部分もあった。

 レティシアは2人の祖父の思い……才能と考古学の知識、そして命そのものを受け継いだキャラクターであり、過去としっかり向き合った上で自分の道を歩んだキャラクターと解釈できる。

 一方でゲラルトはあくまでも過去にしか興味がなく、そこに縛られ続けている。彼は自分自身が世界の王になる気もなく、あくまでもヒトラーが大好きなだけである」

それで語ると、ゲラルトがいかに縛られた存在かわかるね……

そして、この構図は”過去のルパン作品と今作のルパン作品”という構図にもつながる

私「つまり、彼らが縛られている過去の人物……祖父への尊敬などというのは、そのまんま『ルパン三世の過去作たち』ということもできる。

 今作は祖父=過去作の思いや手法を受け継ぎつつ、それでも新しいものを見せよう、という気概に満ちているわけですよ

息子「……過去の名監督や名作に捉われていると、ゲラルトみたいになっちゃうとも言えるのかな……」

私「あの超兵器を出して全部をぶっ壊す、ということもできるんだけれど……でもそれをしなかった。いや、自分としてはそれをやって『映画ドラクエ』の再来でもそれはそれで面白いとは思うけれど、その道は選択しなかった。

 トムズが許してくれないかな?

 でもさ”CGでもこれだけできます、手書きの良さを表現しつつ、新しいルパンをつくれます”ということを表現するための脚本だったとすれば、これほど適しているものもないのではないか?

 なぜ今作が”THE FIRST”なのかというと、今作がCGアニメのファーストであると同時に、ファースト達への敬意を込める一方で、新作ルパン復活の狼煙を上げる作品にしようという覚悟を込めたからなのではないでしょうか?」

まとめ

では、この記事のまとめです!

  • 王道過ぎるほどに王道なルパン映画!
  • 物語の流れには不満があるものの、映像を見せる脚本としてならば納得!
  • キャラクターたちの生き生きした姿と声優陣の演技は健在!
  • 2Dの金字塔の動きを3DCGで描いた功績に拍手を!

これはこれでアリだと思います

息子「2019年はモンキーパンチ先生や井上真樹夫さんが亡くなられたこともあり、ルパンとしては残念な気持ちになることも多い1年になってしまったかもしれません」

私「それだけ長く愛された作品ということもできるし、こればっかりは防ぎようがないのですが……やはり色々な思いがよぎるのも確かです。

 謹んでご冥福をお祈りいたします。

 だけれど、同時にこのような”古き良きルパン””新しい挑戦”の両立した作品が生まれたことは、特筆すべきことでしょう

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中